相続手続き

①とある渉外登記の経験

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

相続が発生した場合、関係者全員が日本国籍で日本在住であれば、時間や手間がかかることはあれ、相続手続きが進まないことはありません。しかし、相続関係者が他の国籍を持っている方や海外在住者ですと相続手続きを進めることが難しいことがあります。例えば、亡くなられた方が韓国籍の方の場合は韓国民法が適用されますし、戸籍等の書類も韓国発行のものを使う必要があります。このようないわゆる渉外登記は定型的に進むことはなく、なかなか大変です。今回は以前私が経験した中で一番苦戦した渉外登記について書いていこうと思います(守秘義務があるため話の本筋と関係ないところで実際の事案と内容を変えていることをご了承ください)

 

数年前とある相続を進めていました。この相続の相続人の一人が他の相続人と連絡が取れず不在者財産管理人選任手続きにより、家庭裁判所が出入国履歴まで照会をかけ、ようやく消息が明らかになった方でした。この方、日本には、時折帰国していたものの、ほとんどその国に移住したような状況であり、その国で自営業を営んでおりました。ただその自営業は成功しているとは言えず、金銭に困っており、その相続はその人の兄弟で法定相続分で相続することになりました。相続財産はお金と不動産だったので、お金はすぐに分配し、不動産はのちに売却する方向で話を進めることになりました。

 

とりあえず私は、法定相続分での不動産の名義変更登記済ませて、あとは不動産屋に依頼をかけて売却するだけになりました。しかし、確か冬のある日だったと思うのですが、国際電話で、その相続人のパートナーから突然その相続人が海外現地でお亡くなりになった旨の連絡がありました。どうやら以前から相続人に何かあった場合私に連絡するように、私の連絡先を伝えていたようです。ただ、そのパートナーの方も日本語が片言であまりうまくなく状況がうまく伝わりませんでした。この現状を説明しますと、この方の相続が発生したことにより、この不動産を売却するにあたり、先に名義変更をしましたが、また名義変更をする必要が生じました。

しかし難しいのが、相続が発生したことをどう証明するのかでした。相続の事実を証する書面は戸籍謄本です。日本で発生する相続の大半は、親類が死亡届を役所に提出し、戸籍に死亡の事実が反映されるので、問題が発生することはないのですが、この方の場合は海外で死亡しており、身近に親類はおらず、日本語が

片言のパートナーのみです。どうやって死亡の事実を戸籍に反映させるべきか、大変に悩ましい問題でした。

(続く)

司法書士 松尾孝紀

  • このエントリーをはてなブックマークに追加