相続手続き

相続放棄に関して①(三か月経過後、遺産分割協議後)

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民法上の「相続放棄」とは、亡くなった方(被相続人)の権利義務の承継を、相続時点からなかったことにすることです。この相続放棄をするためには、家庭裁判所に相続放棄の申し出をする必要があります。ところで一般の方が相続放棄をしたといった場合は、遺産分割協議において財産を承継しなかったという意味が大半です。

法律を知らないと二つの「相続放棄」の違いが判りません。そこで具体例を出して説明したいと思います。お亡くなりになった方の財産が①貯金100万円と②借金50万円あったとしましょう。相続人は亡くなった方の子二人(A,Bとします)とします。但し②の借金については相続した際には知らないこととします。AとBが話し合った結果(遺産分割協議の成立)Aが貯金を相続することにしました。よって①の100万円はAのものになります。相続後1年がたち②の借金の債権者が相続人に取り立てに来ました。Bとしては、財産を全て譲ったのでAに全て請求してくれと言いましたが、Aは返済を拒否しました。そこで、債権者はBに対して請求をしました。実はこの際Bは債権者からの請求を拒否することはできません(ちなみに借金は相続分2分の1つまり25万円を払うことになります)。

ではBは返済を拒否するためにはどうすべきだったかといえば、遺産分割協議ではなく裁判所に申し立てて相続放棄をすればよかったのです。相続放棄をすることによってBは貯金も借金も引き継ぐことがなくなります。

ただ、相続した時点で、借金の存在を知らなかったのであれば、わざわざ裁判所に行って相続放棄手続きをするのは現実的とは言えません。

ではBは相続放棄をし、債権者からの請求を拒否できるのでしょうか。

実は相続放棄は相続の承認をするまでにしなければなりません。相続の承認の要件は以下の条文の通りです。

 

「民法第921条(法定単純承認)

次に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなす。

1.相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。ただし、保存行為及び第602条に定める期間を超えない賃貸をすることは、この限りでない。

2.相続人が第915条第1項の期間内(筆者注:相続を知ってから3か月以内)に限定承認又は相続の放棄をしなかったとき。

3.省略」

 

今回のケースでは①遺産分割により、相続財産を処分したので単純承認にあたるのではないか②相続を知ってから3か月を経過しているので単純承認にあたるのではないかという問題があります。

では次の記事でこの場合に相続放棄が認められるかを検討していきます。

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